呪術の国のアリス
(あかん、死ぬ、ほんまに凍死する…)
冬の河川敷に、着物を着た女の子が一人。とっても寒そうにしています。
どうしてこんなことになってしまったのでしょう?そうです、ドブカスのおうちにドブカスな術式を持った女の子として生まれてしまったからですね。
女の子は3日前に、14才になりました。そうしたら、婚約相手としておうちの人がよくわからない汚いオッサンを連れてきました。
それが嫌で嫌でしかたなくて、着の身着のままで逃げてきてしまったのです。
女の子はずっとおうちで花嫁修業をさせられていたので、もちろんお金なんて持っていませんし、お外に知り合いもいません。ただ一つ持っていったスマホも、寒すぎて電池がすぐになくなってしまいました。
ここで死んじゃうんだろうな、と女の子は思いました。
いえ、生きていく方法はあったかもしれません。けれど交番に駆け込めばいずれは連れ戻されるでしょうし、体を売るのはおうちであのハゲジジイと結婚するのと大して変わりません。
女の子はおうちで一番機械が得意でした。お料理やお裁縫をするより、男の子たちと一緒に鬼ごっこをしたり、スマホを見たりするほうがずーっと好きでした。
一人の時間はスマホばっかりだったので、インターネットには詳しくなりました。とある暇人呪術師が開発した呪術ネットへのアクセス方法だって知ってるのです。なんならさっきまで
御三家クソすぎて家出したったwwwwww
1.呪術師の匿名さん
で、凍死寸前なのが俺ってわけ
みたいなクソスレを立てていました。とってもおませさんですね。
なんだか頭もふわふわしてきました。潮時ですね。
思えば、昔から生きてきていいことなんてほとんどなかった気がします。
お母さんは死んで、お父さんは名乗り出てくれないところから始まって、バカみたいな術式を知って、したくもない花嫁修業ばっかりして、重くて古臭い着物を着て…
寒くて寒くて、橋の下で体を丸めてうずくまります。もし女の子がマッチ売りの少女だったなら、幸せな幻覚の中で逝くこともできたでしょうに。
まあ、何十才も年上なジジイにのしかかられて腹上死するよりはマシな結末でしょう。腐って骨になる前に、誰かが見つけてくれたら嬉しいなと考えて、女の子は目を閉じました。
「……何だ、このスレ?」